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賛・燦・サッポロ 

 投稿者:編集部  投稿日:2014年12月 9日(火)10時59分45秒
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             賛・燦・サッポロ 


     南国の地佐賀の男が北海道札幌へと赴任。馬の種付けツアーとも言える
     「日高ホースインラブツアー」まで企画し、紳士だけでなく淑女たちか
     らも大好評を得たようです。札幌/北海道の土地柄・人柄に惚れ込んだ
     に違い在りません。札幌の「明るさ」がどこからきているのかに触れた
     大学新聞の筆者寄稿記事を読むとなるほどと思わされます。何処に住も
     うと、その土地の良さをじっくり見つけ出し味わうことができる目を持
     っている人です。(編集部)






 昭和五十六年から六十四年(平成元年)の六年間、川崎製鉄(現JFE)札幌支店に勤
務した。
 その後、大阪支社に転勤となったが、子供の学校の都合で三年間単身赴任をした(いわ
ゆる逆単身)。したがって家族は九年間札幌に居たわけで、二人の息子にとって札幌は名
実ともにふる里である。
 後段に紹介する「賛・燦・サッポロ」は、当時たまたま札幌を訪れていた母校、早稲田
大学新聞に頼まれて書いた札幌紹介記事である。二十年も前の話で恐縮ではあるが、内容
もさることながらタイトルが大層気に入っており捨て難く掲載させていただく次第である。
 タイトルといえば、札幌でもう一つ忘れ難い思い出がある。
「日高ホースインラブツアー(以下HHILTと略す)」である。競争馬の産地、日高地
方に馬の種付けを観に行くバスツアーを企画し、その案内状に付けたタイトルがそれであ
り、ホースとフォールをかけた所がミソである。
 話の発端は、脱サラした友人が各地を放浪したあげく日高の牧場の入り婿におさまり、
一度、競走馬の種付けでも見に来いと誘ってくれたことに始まる。同行者を募った所、我
も我もとあっという間に二十人を超え(このあたりが北海道の北海道たるゆえんである)
どうせなら、バスを一台仕立てて行こう、日頃お世話になっている薄野のお姉さん方にも
声を掛けようということになり、私が案内状を書く羽目となった。確か出だしは「春まだ
浅い日高の星を訪れ、そこで繰り広げられる馬たちの甘く、また厳粛な生の営みを見学し
……」であった。
 そして三月某日朝、時計台前に集合したメンバーは男性二十五名、薄野(すすきの)のク
ラブ・バー・スナックの女性十五名。
 コースは種馬所を見学後、ケンタッキーファーム(観光牧場)で昼食(ジンギスカンバ
ーベキュー食べ放題・飲み放題)、帰路に名馬シンザンの近況を訪ねるというもので、車
中の飲み物代まで入れて男七千円、女三千円。これできっちり予算内でおさめたのだから
プロデューサーとしての腕もまずまずであろう。
 好評(?)に応え翌年も挙行した。タイトルは当然「HHILTパート2」である。案
内状の書き出しは「日高の里にまたまた春が訪れ、ホースインラブの季節がやってまいり
ました……」であった。今度のコースは、種馬所見学後、静内にある二十間道路の桜(明
治天皇の御料牧場の導入路で、幅二十間の両側に桜並木が三千本、えんえん七キロに及ぶ
桜の名所)の花見をするというもので、題して「お馬と桜(ハナ)と××××(ニャンニャン)と」。
 さすがに三年目は、もう結構という女性陣の声で打止めとなったが、噂を聞き付けた東
京本社の御偉方(おえらがた)やユーザーの方々を連れてのVIPツアーを数回は催した。
その都度、薄野のママさんに頼んで若い子を二、三人出してもらうのが難儀といえば難儀
であった。なぜなら、種付けなんて男だけでみてもそう面白いものじゃなく、キャーとか
スゴイとか女の子達の嬌声があって初めて成り立つものだからである。
 結局、下見も含めて五十頭(二十五回)以上は観たであろうか。当然、種付けには詳し
くなった。もはや通といっていい。ちなみに、私の得意とするうんちく話ベストスリーは
一に宝塚(歌劇)、二に種付け(馬に限る)、三、四がなくて五に風の盆である。
 前置きが長くなった。本題に移ろう。



【賛・燦・サッポロ】 (早稲田大学新聞寄稿記事)
 札幌には青空がよく似合う、と太宰治が言ったかどうかは知らないが、札幌では四季を
間わず澄みきった青空の日が多い。同じ雪国でも、日本海側の諸県とは決定的に違うとこ
ろだ。
 札幌は明るい。街も、そして人も。
 この明るさは何処から来るのだろう。経済的には豊かとは言えない。従来、北海道は三
%経済といわれており、個人所得もそれに準じて低い方である。加えてこの数年、『一セ
ン(造船)ニタン(炭鉱・減反)ニテツ(国鉄・鉄鋼)三ザン(水産・林産・非鉄鉱山)』
と言われるように道内主要産業は軒並みダウンという有様で、状況はかなり暗いのである。
 それでも、札幌の人は明るく、くったくがない。 それに、よく遊ぶ。いつかタモリが
「北海道は道民挙げて遊べ遊べだもんね」と言っていたが、それは一面当っている。夏場
は「短い夏を精一杯エンジョイしよう」と遊び、冬場は「(雪で閉ざされて)やることが
ないから遊ぶ」ということになる。これは、宵越しの金は持たないとする昔の江戸っ子に
似た気質と大陸的な楽天性-それこそ貯蓄のし過ぎで世界中のひんしゅくをかっている今
の日本人とは異質のものだ。もっとも、首都圏のサラリーマンに比べると、家や土地も随
分と割安だし、若い人たちにとって助かるのは結婚式が会費制だということだ。腕のいい
発起人なら披露宴の費用はもちろん、新婚旅行の費用まで会費で賄ってしまう。 反面、
気軽に結婚できるのが離婚率の高い一因だという説もあるが、ともかく、華美にぜいたく
になる一方の内地の結婚式に比べて、合理的だし、さわやかである。
 更に言えば、百五十万もの人が住む日本で五番目の都市でありながら、車で十五分も走
ればスキー場へ、三十分でゴルフ場へ行ける。一寸、山に入れば「ヒグマに注意」の看板
にぶつかるという豊かな自然、人口密度の希薄さからくる生活コストの低さ―この真の意
味の豊かさが札幌の人の明るさ、くったくのなさ、おおらかさを育んでいると思う。そし
て、「世界一の金持国と言われても、豊かになったという実感がない」とぼやきながら、
土地転がしと財テクに狂奔する現代日本人がいつの間にか失くしたものが、ここには残っ
ている。

     さみしい時 むなしい時
      私はいつもこの町にくるの
     どこか違うの この町だけは
      いつも私にやさしくするの

      そう、どこか違うのだ、札幌の街は。


斜光13号 2008年

          
                        (α編集部)

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