teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]

新着順:15/23 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

平成の光源氏 「明日海 りお」

 投稿者:編集部  投稿日:2016年 8月17日(水)22時25分51秒
  通報 編集済
 
     平成の光源氏 「明日海 りお」




『新源氏物語』の初演は1981年、今回の花組公演は3回目に当たるそうだが、私は初
めての観劇だった。恥ずかしい話であるが、源氏物語を映画を含めて通しで観るのは今回
が初めて。プログラムに載っていた人物相関図が大変役に立った。それにしても、宝塚歌
劇の演出陣のダイジェスト能力はすごい。有名なポイント、例えば、雨夜の品定め、若紫、
朧月夜などをちゃんと押える一方、花の宴のような宝塚が得意とするきらびやかな場面を
随所に配置する――柴田先生はじめ座付作者の皆さんの力倆に感服した。

 もう一つ。恥かきついでに言えば、主人公の光源氏に対し、偏見を持っていた。いくら
高貴で美男子とはいえ、あれだけ多くの女性と浮名を流して許されるのか。男らしく、ち
ゃんと仕事や生活に向き合っているのかと。ところが、明日海・源氏が堂々と、かつ真摯
に恋愛ごとに取り組んでいる姿を観ていて、フッと閃いたことがある。それは――平安時
代、政治の実権を握っていたのは藤原氏であるが、彼らのやり方は、自分の娘を皇后とし
て送り込み、生まれた子供(天皇)の外祖父として権力をふるうというもの。となると、
将来の皇后を産み育てる、高貴で、かつ才色兼備の女性を口説き、獲得することは、もは
や単なる色恋沙汰ではなく、男の本来の仕事と言うべきではないか。特に高級貴族であれ
ば。そう考えると、源氏を取り巻く女性達が大して嫉妬もせず、むしろ敬意を持って源氏
に接しているのもうなずけよう。もち論、現代のように独占欲にかられ、嫉妬の鬼となる
六条御息所も居て、これはこれで人間の業というもの。面白いのは、当時、最も恐れられ
ていた崇りや生霊をここに登場させたこと、ストーリーテラーとしての紫式部のテクニッ
クであろう。更に言えば、父と子で不義の子を持つという、運命の輪廻を感じさせる最終
のシーンは、仏教思想で締めくくるという作者の意図を示すものといえよう。

 明日海(あすみ)の光源氏は立派の一言に尽きる。生来の品の良さと純粋性が、たとえ
情事の場面でも清潔感があり、ひたむきな源氏の生き方を表現していた。春日野八千代を
昭和の源氏役者とすれば、新しい平成の源氏役者の誕生である。

(『歌劇』の高声低声欄 2016.新年号掲載)
※タイトルはα編集部による


     
                   (α編集部)

618

 
 

新着順:15/23 《前のページ | 次のページ》
/23