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「さが・さくら会」会報 2015年寄稿文集 後半

 投稿者:編集部  投稿日:2018年 1月25日(木)12時59分54秒
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  「さが・さくら会」会報 2015年寄稿文集 後半


再び、オリジナルの良さとは 7月号
 5月13日、宝塚大劇場で月組公演を観劇した。『1789-バスティーユの恋人たちー』
の批評は難しい。作品のレベルとしては、そう低くなく、むしろ上の部だと思うが、何か
違和感がある。共感性が足りないというか、感情移入がしにくいというか。
 その理由の一つは、演出の小池修一郎の言う、フランス製ミュージカルの特殊性一楽曲
は単独でポップスとしてヒットさせるのが目的であるため、前後のセリフに関わらず、歌
詞はストーリーを離れたものになっている。もちろん、宝塚版は芝居内容に応じ、潤色さ
れてはいるが、物語り性が薄まるのは仕方がない。
また、複数主役の群像劇が主で、歌手とダンサーは完全分業である等々-によると思われ
る。
 もう一つは配役の問題。副題からもわかるように、本作品は民衆側の視点からフランス
革命を捉えた芝居で、主役の恋人たちは農民出身の口ナン(龍)と王太子の養育係のオラン
プのはずが、トップ娘役の愛希はマリーアントワネット。フランス革命ならヒロインはア
ントワネットという、演出・小池の思い込みが結果として、話を分散させ、感動を薄めた
きらいがある。
 個々にみると、まず、スペクタクルミュージカルと言われるように、集団による歌やダ
ンスが多いが、それぞれ迫力があり、見応えも十分。月組に限らず、個人より全体の成果
を第一に考える宝塚の良さを感じさせる。振付も良く、特にボディーパーカッションを用
いた「誰の為に踊らされているか?」のナンバーは、一見の価値ありである。次に、演技
面。トップコンビをはじめ、皆それぞれ熱演だが、もう一つ伝わってこない。演出のせい
もある。革命側の中心であるダントン(沙央)、ロベスピエール(珠城)、デムーラン
(凪七)の描き方が類型的で、面白みに欠ける。確か後日、ダントンはロベスピエールに
ギロチンにかけられるはずだが。劇中では仲良しクラブのまま。革命側にも階層や格差が
あることを示すことで、物語の奥行きも深まると思う。王党側も、アントワネット、フェ
ルゼン、ルイ16世はベルばらとほぼ同じキャラクター。ルイの関心事が錠前作りプラスギ
ロチンの機械に広がるぐらい。民衆の側に立った革命劇なら、国庫を傾ける程の浪費癖の
反省か、逆に全く鈍感で反省しない王妃を描けば面白いと思うが、アントワネットはベル
ばら同様、「フランスの王妃ですから」と、のたまう。
 才人・小池もフランス式ミュージカルの潤色に追われ、魅力ある人物像を創り出すまで
には至らなかったようだ。思えば小池も『エリザベート』の成功以来、海外ミュージカル
やハリウッド映画の潤色、脚色を専らとし、オリジナルものの創作をおろそかにしてきた
ツケが回ってきたかもしれない。前の花組公演『カリスタの風に抱かれて』で感じたオリ
ジナル作品の良さ、愉しさを強く思い出させた公演であった。(完)

『1789-バスティーユの恋人たちー』月組





建前の美しさ  9月号
 7月10日~17日、神戸に帰り、宙組と雪組(初日)公演を観劇した。劇評はさておきこ
れで月組を除く4組の新トップお披露目公演を一通り観たことになる(星組は全国ツアー
だけであるが)。4組のトップスターの感想から――。一番驚かされたのは北翔海莉。
(トップになれた)うれしさを何のてらいもなく正直に身体全体で表している姿に、こちら
も嬉しくなって拍手をするという、彼女の人徳であろう。そして歌のうまさ。元々、宝塚
歌劇史上、トップクラスの実力の持ち主であるが、トップになると更にワンランク上がる
から不思議である。次の公演『ガイズ&ドールズ』も是非観たいと思ったが、こういう気
持になったのはいつ以来だろう。めったにない事である。
 対照的だったのは朝夏まなと。トップになっての気負いや不安を全く感じさせない。臆
せず堂々と、まるで何年も前からトップを張っていたかのように主役をやり遂げた。この
自信は何処からくるのだろう。歌もダンスも芝居も格段にうまくなっており、真風をはじ
め組子達を圧倒していたように思う。将来とてつもない大物になるのでは、との予感さえ
覚えた。
 明日海りおは歌・ダンス・芝居三拍子揃った実力派であり、華のある容姿からトップ中
のトップになる可能性大。ただ、組としては二番手が育っておらず、しばらくは彼女の孤
軍奮闘が続くことになろう。
 早霧せいなもトップになり、大きく変貌した一人。組を引張らねばの自覚から、浮つい
た所がなくなり、着実に成長している。この組は望海という強力な二番手がおり、更に月
城や永久輝など将来のスター候補にも恵まれ、楽しみである。
 さて。劇評であるが『王家に捧ぐ歌』は前号で久富君、鈴田さん達が書かれていたよう
に傑作である。今年度、というよりここ数年でもベストワンに上げられるぐらい。私も2003
年の初演を観ているが、今回の方が面白かった。贔屓目もあるが、朝夏の方が湖月よりも
役柄に合っているというか、コスチュームものが良く似合い、気品もあって颯爽としてい
た。もう一つ。初演ではイラク戦争を意識して、解放戦争は是か?といった政治的色合い
が濃く出ていたが、それが薄まり、スッキリした事が挙げられる。
 雪組公演『星逢一夜』――。上田久美子の大劇場・初演出でお披露目公演だそうだが、
それを斟酌しても、及第点は出せない。ありえないことが多過ぎる。例えば、いくら庶子
とはいえ、大名の子が百姓の子とー緒に遊び、友情を育むか。絶対にない。一揆騒動の結
着をつけるため殿様・早霧とー揆騒動の首謀者・望海が一騎打ちをするが、これもありえ
ない。いかに純愛とはいえ、三人の子持ちの百姓の寡婦・咲妃に殿様が恋心を抱くか?ま
ずない……辛口の批評になったが、その割に観客の受けは良かった。中には泣いている人
も居て。考えてみると、この芝居のテーマは幕藩体制下の農民一揆ではなく、大人になっ
ても、立場や身分が違っても変わらぬ純粋な友情や恋愛を描くことであり、観客もそれを
観たいと思っている。現実的でないことはわかっているが、時には友情や恋愛は素晴らし
いものだという建前を信じたい―との観客の想いに、この芝居は応えていたと思う。そし
て、それを可能にしたのが生徒達である。彼女らはいつものように真剣に真面目に与えら
れた役を全うする。中には感情移入し過ぎて涙を流す生徒も。建前を信じる者の美しさと
いうか、他の商業演劇と違う、宝塚の宝塚たるゆえんである。
 打って変わって『ラ・エスメラルダ』は底抜けに明るいラテン・ショー。早霧をはじめ
雪組全員が、芝居の時代劇ならではの重苦しさをはらすように盛大に歌い、かつ踊る。中
でも望海の歌のうまさが際立つ。総じて曲の選定も良く、振付も斬新。彩・彩コンビ、蓮
城ら中堅と若手スターが随所で活躍し、総合力の雪組を印象づけたショーであった。

『王家に捧ぐ歌』宙組





宝塚は歌だと実感 11月号
 佐賀高校11期卒業生同窓会(なんと55周年)が横浜であり、その翌日の10月20日、
東京宝塚劇場で星組公演『ガイズ&ドールズ』を観劇した。
 高校時代に観たハリウッド映画版・邦題『野郎どもと女たち』がすごく面白がた記憶が
あり、本公演を楽しみにしていたが、十分その期待に応える出来映えであった。
 実は、映画でサラ役をやったジーン・シモンズの大ファン。ハヴァナのシーンで、酒に
酔っ払った彼女が野暮ったい上着の一番上のボタンを外しただけなのに、まるでイブニン
グドレスを着ていたかのようなモーレツな色気を発したのを今でも覚えている。今回も楽
しみにしていたが、最初からワンピースとジャケットのアンサンブルで、いささかがっか
り。それでも妃海風(ヒナミ フウ)は大健闘。純情で、しっかり者、それでいて可愛いサラ役を
上手にこなしていた。歌もうまい。
 もう一つの楽しみは北翔海莉(ホクショ ウカイリ)の歌。何よりも声がいい。包み込むような耳
ざわりのいい伸びやかな声。全曲素晴らしいが、ショーに入って英語で歌う「LUCK BE A
LADY」が特にいい。彼女をみているとつくづく歌劇は歌だなと思う。とにかく安心して
公演を観ることができる。時には誇らしさを感じながら。
 準主役的な役を演じた紅ゆずる、礼真琴のコンビも及第点。ハンサムで人は良いが気が
弱いネイサン役は紅にぴったり。彼女も何かふっ切れた感じで好演だった。礼も女役が板
に付いてきたというか、映画でのアデレイド役よりずっと魅力的だった。
 星組も七海ひろきの加入で一段と層が厚くなり、麻央侑希、(マオユ ウキ)瀬央ゆりあ、紫藤
りゅう等々、楽しみな若手が各々、役を得て活躍しているのも本公演の収穫だろう。
 演出面では、冒頭のブロードウェイの街のシーンが素晴らしい。主題歌の軽快なメロデ
ィに乗って多種多様な人物が行き来するのが楽しく、これぞミュージカルという感じ。そ
こへ救世軍の一隊が登場しヽ物語が展開していくが、全編にわたり、筋の流れがスムーズ
で飽かせない。ベテラン演出家、酒井澄夫の面目躍如といったところ。
 ところで本作品のニューヨーク初演は1950年。当時、キューバはアメリカの友好国で
ハヴァナはニューヨークからのデートコース?!。その後、長い国交断絶を経て、今年、
国交回復とか。まさに隔世の感ありだが、高校時代に観た映画を歌劇として、今の若いフ
ァンと共に共感し合う――宝塚ファンならではの醍醐味である。
 最後になったが、蒼舞咲歩(ソウブ サキホ)さん。出番は全部で5場面。最初のプロローグの
シーンでは酔っ払いの男に扮し、セリフこそないものの、ちゃんと演技をしていて、こち
らも思わずうなずいた次第。ハヴァナではお客に扮していたが、いずれもスラッとした立
ち姿と端正なマスクが際立ち、将来が楽しみである。又、フィナーレでのロケットの踊り
子が本当に可愛くて、娘役でもいけるのではと、楽しみは増すばかりである。

『ガイズ&ドールズ』星組



(写真は編集部による)

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