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「さが・さくら会」会報 2016年寄稿文

 投稿者:編集部  投稿日:2018年 4月 3日(火)17時53分12秒
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  「さが・さくら会」会報 2016年寄稿文


目の付け所はいいのだが 1月号
 月組の『舞音』――かつて、同じく「マノン・レスコー」を原作とする「情婦マノン」
というフランス映画を観たことがある。舞台は、イスラエル建国当時の中近東。粗筋は、
地位も良識もある中年男が奔放な少女に恋をし、散々、翻弄されたあげく破滅していくと
いうもの。このテーマは作家達の興味をひくらしく「ロリータ」、「カルメン」、谷崎の
「痴人の愛」など、類似の作品が多い。今回、演出家・植田景子が舞台化に取り組んだの
もわかる。
 さて、本公演の舞台はフランス植民地時代のベトナム。この設定はいい。やがて独立に
より追い出されるという将来を予感させるから。この将来性がないという所がポイントで、
主人公も失意の状態か、人生に倦んでいる方がいい。それを埋めようとして、成就の見込
みのない恋に走り、破滅へと向う。しかし、『舞音』の主人公は新天地のベトナムに結構
夢をもって赴任する。これは惜しい。どうしてフランス本国を追われた形にしなかったの
だろう。
 次に、女主人公の舞音。彼女は徹底した現世主義で、奔放でコケティッシュな少女でな
ければならないが、実際には最初のキャバレーでの場面位がそうで、後は純愛に目覚める
という従来の宝塚パターン――。植田もベテラン演出家の一人だが、未だ傑作と呼べるも
のは出していない。目の付け所はいいのだが…。
 ただ、作曲家や装置、衣装に外部の力を導入した成果は大いに上がっている。主題歌の
アジア的なメロディーは斬新だし、布を大量に使った装置、キャバレーでの愛希が着てい
た真珠のドレス等は一見の価値がある。
 話は変わるが、今回の公演で驚いたのは、珠城(たまき)りょうを完全な2番手として遇
したこと。プログラム然り。羽根飾り然り。とすれば、珠城は早急に歌をはじめ実力の向
上に努めねばならない。もち論、珠城に抜かれた形の凪七(なぎな)と美弥(みや)には奮起
を促したいが、総じて月組は大人しい。すべてはトップ龍(りゆう) 真咲(まさき)のリー
ダーシップにかかっていると思うのだが…。
(完)

月組『舞音』





天晴れ!!チャレンジ精神  3月号
 今年1月2日、慣例の大劇場初詣でを行ない、宙組公演を観劇した。『シェイクスピア
~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』は、チャレンジ精神あふれる傑作である。作・演出
の生田大和先生と朝夏まなと率いる宙組に喝采を贈りたい。チャレンジの第一は、あのシ
ェイクスピアを、それも作品でなく、殆ど誰も手懸けなかった彼自身を主人公とする物語
りに取り組んだこと。開演前の不安と、懸念は、幕開きとともに解消した。劇中の朝夏・
シェイクスピアは実に生き生きと振舞い、恋をし、文を書き、やがて劇作家として成功す
るが、挫折。そして再生へと――フィクションと思えぬ程、リアルで説得力のある展開で
ある。その理由の一つに、劇中劇の巧みな活用が挙げられる。例えば、妻アン(実咲)と
の出会いは「ロミオとジュリエット」のバルコニーの場面が使われ、彼らはその登場人物
と同一化する。陰謀のシーンは「マクベス」、妻への嫉妬は「オセロ」、そして妻との和
解は「冬物語」といった具合。我々、観客としては(「冬物語」を除き)周知の筋書きだ
けに現実味が増すというもの。見事なテクニックである。
もう一つの試みは、副題にもあるように、言葉の持つ力をメインテーマにドラマを創っ
ていること。例えば劇中、美穂(流石の存在感)扮するエリザベス女王は、武力や権威で
はなく、言葉や演劇で国民をまとめ国家づくりをしようとするが、これがシェイクスピア
の成功と挫折につながっていく。翻って考えると、現代でも、経済や軍事だけでなく文化
の重要性がよく言われる。もち論、宝塚歌劇もその一端を担っているわけだ。そう言えば、
劇の終盤、起を促す感動的なシーンがあるが、これなど“言の葉”への作者の強い思いを
感じさせる。
 さて、チャレンジと一口に言うが、演じる側は大変である。お手本になるものはないし、
それだけに実力が要求される。逆に言えば、実力者揃いの宙組だからこそやれたともいえ
る。朝夏は、この難役を気負いもなく、サラリと演じ、それでいてシェイクスピアになっ
ていた。一段と演技の幅を拡げたようだ。実咲は、きめ細かに夫婦愛を表現、真風は主人
公の運命を左右する重要な役どころ、持前の迫力のある演技で応えていた、、際立った美貌
の伶美、明るいキャラクターの愛月と桜木等々、多士済々の宙祖の力が結集して、正月作
品らしい楽しく、ダかつ重厚なエンターテインメントが生まれた。
 『HOT EYES!!』はダイナミックショーというだけあって、ショパンあり、歌
謡曲ありの賑やかで、楽しいショー。宝塚の誇る振付師が大勢参加、ダンスでも実力者揃
いの宙組生が互いに競い合って舞台を創っている様は迫力十分、見応えがある。特に朝夏
がリサイタルのように一人で踊るシーンは、彼女のダンスのうまさが“公認”されている
ことを改めて知り、大変誇らしく、嬉しく思った。(完)


宙組 『シェイクスピア~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』


             宙組『HOT EYES!!』
           


(写真は編集部による)

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