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「さが・さくら会」会報 2018年寄稿文集1

 投稿者:編集部  投稿日:2018年 5月 6日(日)15時48分25秒
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  「さが・さくら会」会報 2018年寄稿文集1


神々の意味するもの

 大劇場・宙組公演『神々の土地』を観た。まず、題名の“神々”が面白い。当時のロシ
ア帝国はロシア正教会とはいえ、れっきとしたキリスト教国である。それを神々とは―。
しかし考えてみれば皇后アレクサンドラはドイツ出身。嫁入り前はプロテスタントだった
はずである。また怪僧ラスプーチンは、いかにもカルト的で、信者にとっては彼自身が神
かもしれない。更に革命派のボルシェビキが信じる共産主義も、ある意味、宗教的である。
そして国民の大多数を占める農民は、圧政と戦争に打ちひしがれ、信仰心すら失いづつあ
る。冒頭、雪原のシーンでの猟師の叫びは痛切である。作・演出の上田久美子氏は、革命
前夜のロシアの混沌とした状況を、各々が信じる神々として表現したのであろ
う(あくまで憶測であるが)。
 憶測ついでに言えば、上田氏は過去の作品からみて、観念的なテーマを物語化、舞台化
するのに長けた作家である、と思う。今回のテーマは、イギリス貴族の精神といわれる
“ノブレス・オブリージュ(高貴な身分には義務が伴う)”。パンフレットの中でも、成功
や幸福よりも、己に恥じぬよう気高く生きることを描きたいと――。即ち、朝夏まなと演
じるドミトリーはロマノフ王朝を守るためラスプーチンを殺害するが、その思いは通じず、
逆に皇后の怒りをかい、死の戦場へ送られる。そして王朝も二月革命の勃発により滅亡す
る。それでも自己犠牲を厭わず、為すべきことを為す主人公の生き方は胸を打つ。この作
者の意図を理解し、的確な演技で応えた朝夏をはじめとする宙組メンバーの頑張りもあっ
て、重厚かつ爽やかな感動作が誕生した。
 もう一つ。上田氏は、ノブレス・オブリージュは宝塚のトップスターの生き方にも通じ
ること、そして朝夏をその当て書きの対象にしたことを明かしている。トップ就任以来、
組子の成長と組の発展を第一義に考え、真摯に努力してきた朝夏にとって最高の餞(はな
むけ)であり、最後を飾るに相応しい作品に恵まれたと思う。
 当て書きといえば、伶美うららもそう。高貴な役をやらせたら右に出る者はいない彼女
に、主人公の忘れ得ぬ恋の相手、大公妃イリナはピッタリ。圧倒的な美しさと存在感で、
作品に華やぎと奥行を与えた。惜しまれる退団であるが、最後の舞台で、娘役として実質
トップの役を配した上田氏に感謝と喝采を送りたい。(完)

「さが・さくら会」会報1月号








続編を確信 ~ポーの一族~
 1月2日、恒例の大劇場初詣でを行ない、花組公演『ポーの一族』を観劇した。チケッ
トは更紗那知さんに手配していただいた。
 漫画は、年の割に好きな方で、通に近いと自負しているが、少女漫画は見ない。あの瞳
の中の星は、ないと思う。そういう私でも、萩尾望都の名前と『ポーの一族』は知ってい
た。それだけ伝説的な作品だといえる。その漫画を才人・小池修一郎が舞台化する、満を
持して。それも、明日海りおをはじめ華やかな男役が揃う花組でやる。期待はいやがうえ
にも高まった。観劇後の感想は――舞台化は成功したといえる。作品としてのレベルも高
い。ただし、注文もある。まず、ミュージカル・ゴシックとうたっているわりに、肝心の
ゴシックさが足りない。即ち、中世の古城を思わせる荘厳さ、怪奇さが伝わってこない。
もっと作品全体に恐怖やおどろおどろしさが欲しい。配役陣で言えば、瀬戸かずやが演じ
た男爵。バンパネラ(何故バンパイヤではないのか。案外この辺にポイントがあるのかも
しれない)の総帥にしては人間的というか、怖さ、重厚さを感じさせない。又、仙名彩世
が演じる男爵夫人・シーラ。その美貌で、主人公エドガーをはじめ多くの男性を惹きつけ
る重要な役だが、神秘性、あやしさを醸し出すまでには至っていない。花乃まりあだった
らと、ふと思ったものである。同じことがエドガーの妹で、アランにも愛される美少女、
メリーベルに扮した華優希にもいえる。荷が重すぎるのである。花組に限らず、今の宝塚
が抱えている問題、即ち、美人娘役の払底という弱点が作品に影響していると言わざるを
得ない。
 注文はあるにしても、作品はー級品である。時空を超えた、奇想天外な物語をよくまと
め上げたものと感心する。演出家・小池に拍手を送りたい。ただし、舞台化を実現させた
のは、明日海の存在そのものである。小池氏もパンフレットの中で、「構想30年、神は
封印を解かれた」と表現し、「エドガーはいた。明日海りおである。美しさ・神秘性・純
粋さ・魔性、天使と悪魔が共存した魅力の全てを兼ね備えている。完璧である」と述べて
いる。
 もう一人。副主人公のアランに扮した柚香光。日本人離れしたクールな美貌はゴシック
ものによく似合う。純粋さの化身みたいな明日海との相性もぴったり。孤独のあまり友を
求めるエドガーの切なさ、いじらしさ。世の中に絶望し自らバンパネラを選ぶアラン。こ
の2人が結ばれるラストは感動的であり、ゴンドラに乗って昇華するシーンはベルばらを
ほうふっとさせる。そう、第2のベルばらの誕生である。必ずや続編が上演されるものと
確信した。(完)

「さが・さくら会」会報3月号


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